自然な嘔吐、故意の嘔吐 |
12月 16th, 2011 by 上野桂一 |
自然な嘔吐とは、体に害になるものを間違って飲み込んでしまったときに、体外に出してしまおうとする動物本来の防衛機能による嘔吐です。毒物や腐ったものを食べると、臭いや味が脳内の嘔吐中枢を刺激して吐き気を起こさせます。嘔吐しやすい人とは、ひとつは嘔吐中枢が敏感で、わずかな刺激で吐き気を催す人、もうひとつは食道と胃のつなぎ目が緩く、逆流防止機構が弱いために戻しやすくなっている人です。ともに病気ではないので、気にする必要はありません。ただし嘔吐が頻回になると、食道の下部の粘膜が傷ついて吐物に血液が混ざることがあります。最初から血液が混ざっていたか、嘔吐の途中からかは診断に役立つので、見ておいてください。まれですが、食道に強い力が加わっておこる食道破裂や、肝臓の悪い人にみられる食道静脈瘤からの出血の場合もありますので、相談してください。
故意の嘔吐とは、のどに指を入れてわざと嘔吐することで、自己誘発性嘔吐といい、過食症の方が行う場合には過食嘔吐ともいいます。過食したにもかかわらず空腹が持続するので、胃も脳も混乱してしまいます。習慣になりやすく、指入れ嘔吐を繰り返すことが過食症を誘発することもあります。親が行っていると子供がまねをし、過食症の家族性発生の原因にもなります。また自然な嘔吐に比べて、食道粘膜に傷がつきやすく危険です。少し食べ過ぎたとか、ちょっと飲みすぎたという程度で、指を入れて吐く行為は避けるべきです。