頭部外傷の直後に、頭部CT検査を行うべきかという質問を時々受けます。当院にはCTがありませんので、CTを緊急で行える施設に紹介するかを決めることになります。この場合、頭部外傷の経緯、受傷直後の様子、受診時の診察所見などにより患者さんごとに判定しています。ご本人の年齢や基礎疾患の有無も重要です。すべての頭部外傷の方に一般検査として頭部CTを行うことは行き過ぎです。脳挫傷や脳出血の程度次第では、当日CT検査で問題がないと判断しても、24時間後に症状が出現する場合もあります。診察で分からない脳挫傷がCTで初めてわかるということが、ないとは言いませんがきわめて稀です。疑わしい場合は直ちに紹介しています。経過を見る場合には必ず以下のような文面と当院の緊急連絡先を書いた注意書きを当人か保護者の方に渡しています。なおこの文面は浅ノ川総合病院脳神経外科医の大西寛明先生から教えていただいたもので、大変役に立っています。
頭部外傷について
頭部外傷を受けられた方へ
本日の診察では特別な治療はいらないと思われますので、帰宅していただきます。しかし、時にはこのような頭部外傷の後に頭蓋内出血が進行して危険な状態になることがあります。家族の方は頭部打撲後24時間(特に最初の6時間は要注意)、患者様をよく観察して、次のような異常に気づかれたり、本人が訴えたりするようであれば、直ちに当院または最寄りの医療機関にご連絡ください。
- 頭痛がだんだんひどくなる。
- 何度も吐いている。
- 手と足が動きにくい。しびれる。歩きにくい。
- ぼんやりとしている。言葉がはっきりしない。話が通じない。
- うとうとと眠ってしまい、呼んでも目を開けない。
- ひきつけ、けいれんをおこす。
- 呼吸がおかしく、いびきをかいて眠っている。
頭を打った後2,3日間は過度の運動や労働をひかえるように心がけてください。また様子がおかしい場合は、数日以内にもう一度診察を受けてください。
50歳以上(特にご高齢)の方、お酒をたくさん飲まれる方は、軽い頭部打撲後1~2ヶ月の経過で頭蓋内に血腫がたまることがあります(慢性硬膜下血腫)。
頭を打って1~2ヵ月後に頭痛、吐き気、手足が動きにくい、しびれる、物忘れが多い、動作が鈍いなどの症状が見られましたら、直ちに受診してください。
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外出から帰った時や食事前に十分な手洗いを習慣付けましょう。
冬の感染性腸炎の原因は、ノロウィルスやロタウィルスなどのウィルス感染が主体です。どちらも感染力が強く、少量でも口から入ると発病します。そのため手洗いの励行は大変有効です。手洗い後のタオルは各自別々にする、入浴する前に十分体を洗う、食材は内部まで加熱する、調理器具をまめに洗浄するなどが大切です。
下痢の対策として大切なことは水分補給です。吐き気があり水分が取れないときはすぐに医療機関に行ってください。当面の水分は番茶で十分です。お薬は整腸薬が中心で、乱れた腸内細菌叢を正常に戻します。感染性下痢に下痢止めを処方することは通常しません。腸内に下痢の原因物質が長くとどまり、回復が遅れるからです。
手洗いの習慣がこの時期だけで終わらないように、ずっと続けていきたいものです。
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「メッシュ法」の手術で使用するメッシュプラグ
鼡径ヘルニア(脱腸)の手術法は進化しています。
「鼠径」(そけい)とは、太ももの付け根の部分で、「ヘルニア」とは、身体の組織が本来あるべき位置からはみ出した状態をいいます。
「鼠径ヘルニア」とは、太ももの付け根にある筋膜の弱い部分から、腹膜や腸の一部が皮下にはみ出してくる病気で、俗にいう「脱腸」です。子どもだけでなく成人にも多く、男性が8割以上を占めます。
発病当初は、起立時や腹圧を加えた時だけ鼠径部の腫れが生じ、指で押さえると引っ込みます。そのうち小腸などの臓器が出てくるので腫れも大きくなり、不快感や痛みを感じるようになります。腫れを押さえても引っ込まず、お腹が痛くなってきた場合には、緊急の対応が必要になります。唯一の根本的な治療法は手術です。脱腸帯などで我慢するよりも手術をした方が、その後の生活の質が格段に改善します。
手術はそれ程大きなものではありません。ポリプロピレン製の人工膜でふさぐメッシュ法が開発され、治療期間が短縮したばかりでなく、術後のつっぱり感が軽く、再発率も低下しています。年齢、性別、ヘルニアの大きさ、両側か一側か、腹圧のかかる仕事かどうかなどによって、手術法、麻酔法、入院期間などを考慮できますので、まずは気軽に相談してください
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膵臓は胃の裏側にあります。
膵臓には二つの働きがあります。食物の消化酵素である膵液を作り出し、消化管に送り出す外分泌機能、体の糖分の利用に関係するインスリンやグルカゴンなどのホルモンを血液中に放出する内分泌機能です。これらの全く異なる機能をともに持っている臓器は膵臓しかありません。なぜ同じ臓器である必要があるのかについていろいろな意見がありますが、はっきりしません。膵臓はとても興味のある臓器です。ただ魚にはありませんし、哺乳類でも十分注意して探さないと周囲の脂肪組織と色も硬さもそれほど違わない、目立たない臓器です。しかも人間では胃の裏にこっそり背中に貼りついたように存在します。
度の過ぎた飲酒は膵臓を傷めますが、まず外分泌腺を壊してから内分泌線の異常、すなわち糖尿病の発病が起こります。また糖尿病の人の中には膵臓が極端に委縮したか脂肪組織に置き換わってしまった場合もあります。
大量の飲酒などで起こる急性膵炎では、強力な消化酵素である膵液が自分の膵臓を消化してしまう、いわゆる自己消化という現象が起こります。しかもその現象は一旦スイッチがはいると制御不能になる場合があり、たとえ膵臓を全部取ってしまっても救命できないほどです。
膵臓癌が現在も治りにくい癌であることはよく知られています。有効な抗がん剤の開発が進められていますが、まだ十分な成果が上がっていません。手術の成果が得られていないことばかりが強調され、代わりになる治療法が育っていないというのが現状です。膵臓癌の死亡者数は3年前の集計で、約2万5千人です。決して少ない数字ではありません。しかも他の多くのがんの死亡者数が減少しているのに反してその数は一向に減る気配がありません。
胃や肝臓の専門医に比較して膵臓の専門医はきわめて少なく、その傾向は北陸でも同様です。膵臓疾患の早期発見や治療にはいろいろ特殊な知識や技術が必要ですから、専門医が増えることが期待されます。
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腹部の痛みもいろいろ、薬もいろいろです。
胃痛や腹痛を和らげる痛み止めは「解熱鎮痛薬」ではありません。「鎮痙薬」といわれる腹痛、胃痛用の薬を使います。
頭痛、歯痛、生理痛、筋肉痛などで日頃使っている薬は市販薬にしろ医師が処方する薬にしろ、解熱鎮痛薬という種類の薬です。この種の薬を胃痛や腹痛のときに用いると、痛みが緩和しないだけでなく、かえって胃腸障害などを起こして痛みを強めることがあるので、要注意です。生理痛も下腹部の痛みですが、子宮由来の痛みは解熱鎮痛薬で和らげることが可能です。ところが同じ下腹部の痛みでも、食あたりで下痢をしたときに起こる腹痛は、鎮痙薬によって腸の動きを整えることによって痛みを抑えます。
では胃が重く感じる胃もたれや、便秘のためにおなかが張って感じる腹痛に対してはどうすればよいのでしょうか。この場合には胃や腸の動きを活発にする「腸管運動促進薬」を使います。胃腸の動きを抑える鎮痙薬を使うと、症状が強くなることがあります。
このように腹部の痛みといってもいろいろあるので、市販の薬を飲むときは効能書きをよく読んでください。よく分からないときは医師や薬剤師に相談したほうがよいでしょう。
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虫垂はここにあります。
急性虫垂炎は最近めっきり少なくなっています。かつては10人に1人が手術をうけるといわれていたのですが、いまでは30人に1人以下です。その理由のひとつは、食事内容や衛生環境の変化であるといわれています。さらに腹部超音波検査やCTなどの診断機器が進歩し、誤診率が飛躍的に減少したことも一因です。また、これまで虫垂炎と診断すれば必ず手術をしてきたわけですが、程度の軽い初期の場合には手術をせず、抗生物質を投与して経過を見ることも行われるようになっています。
しかし小児ではいまだに重要な病気であることに変わりはありません。診断や治療が遅れると腹膜炎を起こしておおごとになることもあります。小児の全身麻酔を迅速に行なえる施設が減っているので、保護者、かかりつけ医、外科医の連携が今まで以上に大切になっています。
虫垂は通常、右下腹部にあります。ところが虫垂炎になると、みぞおちあたりの軽い痛みから始まることがよくあります。それが徐々に右下腹部におりてきて強い痛みに変化していくわけです。医療機関では腹痛の場所と性状を聞き、白血球数や炎症反応などの血液検査、腹部診察、腹部超音波検査やCTなどを行って総合的に判断します。さらに抗生物質の投与で治せるかどうか、腹腔鏡を用いた手術が適当かなどにも検討します。今からの季節、心配な時は早めに医療機関を受診する方が無難です。
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胆石はどこにできる?
腹部超音波検査の普及により、胆嚢の結石は比較的簡単に見つかるようになりました。手術したほうがよいのか、他に方法はないのかを担当医にしっかり聞いてください。あわてる必要はありません。
胆石発作(右の脇腹の激しい痛みで、油っ気の多い食事の後に起こりやすい)を経験した方は、できるだけ早く手術をしたほうが賢明です。
問題は症状のない方です。胆嚢の壁が厚くなっている、胆汁の通り道(胆管)にも結石がある、胆嚢の中に腫瘍(しこり)を伴う。こういったケースは、症状がなくても手術することをおすすめします。
無症状の胆石の人を長期間経過観察したところ、半数の人が胆石発作を起こしたという報告があります。この半数という割合をどう受けとるかです。手術は胆嚢を摘出しますが、胆嚢は胆汁の通り道そのものではないので術後に支障はありません。ほとんどの場合、内視鏡手術で行え術後の痛みも少なく、入院期間も以前より短くなっています。
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自然な嘔吐とは、体に害になるものを間違って飲み込んでしまったときに、体外に出してしまおうとする動物本来の防衛機能による嘔吐です。毒物や腐ったものを食べると、臭いや味が脳内の嘔吐中枢を刺激して吐き気を起こさせます。嘔吐しやすい人とは、ひとつは嘔吐中枢が敏感で、わずかな刺激で吐き気を催す人、もうひとつは食道と胃のつなぎ目が緩く、逆流防止機構が弱いために戻しやすくなっている人です。ともに病気ではないので、気にする必要はありません。ただし嘔吐が頻回になると、食道の下部の粘膜が傷ついて吐物に血液が混ざることがあります。最初から血液が混ざっていたか、嘔吐の途中からかは診断に役立つので、見ておいてください。まれですが、食道に強い力が加わっておこる食道破裂や、肝臓の悪い人にみられる食道静脈瘤からの出血の場合もありますので、相談してください。
故意の嘔吐とは、のどに指を入れてわざと嘔吐することで、自己誘発性嘔吐といい、過食症の方が行う場合には過食嘔吐ともいいます。過食したにもかかわらず空腹が持続するので、胃も脳も混乱してしまいます。習慣になりやすく、指入れ嘔吐を繰り返すことが過食症を誘発することもあります。親が行っていると子供がまねをし、過食症の家族性発生の原因にもなります。また自然な嘔吐に比べて、食道粘膜に傷がつきやすく危険です。少し食べ過ぎたとか、ちょっと飲みすぎたという程度で、指を入れて吐く行為は避けるべきです。
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お酒は適量を楽しみましょう。
お酒の美味しい季節になりました。「酒は百薬の長」といわれ、適量の飲酒は健康の妨げにはなりません。
日本人は酒に弱い人種です。少量で酔ってしまうのでアルコール性の慢性膵炎や肝障害の患者さんは欧米に比べて少ないといわれてきました。しかし近年、酒の消費量が欧米で減少しているのに対して日本では増加していること、人口の高齢化によって長期間飲酒をしてきた人が増えていることより、欧米レベルに近づいています。なお「常習飲酒」の定義は日本酒3合(ビールなら大瓶3本)を毎日、5年以上飲み続けることとなっています。
慢性膵炎の症状は上腹部や背部の持続性鈍痛です。慢性膵炎の約70%は飲酒が原因で、痛みをまぎらわすためにさらに飲酒を続けるという厄介な病気です。膵臓の外分泌機能が低下すると脂肪の消化不良となり、内分泌機能まで冒されると糖尿病になります。慢性膵炎の年間発生数は約5万人で、増加しています。「常習飲酒」で慢性膵炎になる可能性があります。
飲酒は日本酒換算で一日1.5合までとし、週に2回の休肝日を設けるというのが酒をたしなむ基本です。
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胸焼けの原因は主に脂っこい食べ物と思っていませんか?
日本人の10人に1人、40歳以上では4人に1人が胸やけや喉のつかえ感で悩んでいるといわれています。その割合は近年増加しています。その主たる原因は、胃酸や胆汁が胃から食道に逆流することです。胃カメラで食道に炎症がある場合を逆流性食道炎、症状はあるものの炎症がはっきりしない場合を逆流性食道症といいます。治療は胃酸の分泌を抑える薬、胃の運動を促進する薬、食道の粘膜を保護する薬を飲むことです。食後すぐに横にならない、就眠前1時間は飲んだり食べたりしないという日常生活の注意点を守るだけで、症状が軽くなることもあります。これらの治療で良くならない場合には、胃の内容物が食道内に逆流しにくくする手術(食道裂孔ヘルニア修復術)を行います。この手術法では、おなかを大きく切開することのない内視鏡手術が有効です。
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