頭部外傷後の注意 |
5月 18th, 2015 by 上野桂一 |
頭部外傷の直後に、頭部CT検査を行うべきかという質問を時々受けます。当院にはCTがありませんので、CTを緊急で行える施設に紹介するかを決めることになります。この場合、頭部外傷の経緯、受傷直後の様子、受診時の診察所見などにより患者さんごとに判定しています。ご本人の年齢や基礎疾患の有無も重要です。すべての頭部外傷の方に一般検査として頭部CTを行うことは行き過ぎです。脳挫傷や脳出血の程度次第では、当日CT検査で問題がないと判断しても、24時間後に症状が出現する場合もあります。診察で分からない脳挫傷がCTで初めてわかるということが、ないとは言いませんがきわめて稀です。疑わしい場合は直ちに紹介しています。経過を見る場合には必ず以下のような文面と当院の緊急連絡先を書いた注意書きを当人か保護者の方に渡しています。なおこの文面は浅ノ川総合病院脳神経外科医の大西寛明先生から教えていただいたもので、大変役に立っています。
頭部外傷を受けられた方へ
本日の診察では特別な治療はいらないと思われますので、帰宅していただきます。しかし、時にはこのような頭部外傷の後に頭蓋内出血が進行して危険な状態になることがあります。家族の方は頭部打撲後24時間(特に最初の6時間は要注意)、患者様をよく観察して、次のような異常に気づかれたり、本人が訴えたりするようであれば、直ちに当院または最寄りの医療機関にご連絡ください。
- 頭痛がだんだんひどくなる。
- 何度も吐いている。
- 手と足が動きにくい。しびれる。歩きにくい。
- ぼんやりとしている。言葉がはっきりしない。話が通じない。
- うとうとと眠ってしまい、呼んでも目を開けない。
- ひきつけ、けいれんをおこす。
- 呼吸がおかしく、いびきをかいて眠っている。
頭を打った後2,3日間は過度の運動や労働をひかえるように心がけてください。また様子がおかしい場合は、数日以内にもう一度診察を受けてください。
50歳以上(特にご高齢)の方、お酒をたくさん飲まれる方は、軽い頭部打撲後1~2ヶ月の経過で頭蓋内に血腫がたまることがあります(慢性硬膜下血腫)。
頭を打って1~2ヵ月後に頭痛、吐き気、手足が動きにくい、しびれる、物忘れが多い、動作が鈍いなどの症状が見られましたら、直ちに受診してください。