「膵臓」についてもっと知ろう |
9月 5th, 2012 by 上野桂一 |
膵臓には二つの働きがあります。食物の消化酵素である膵液を作り出し、消化管に送り出す外分泌機能、体の糖分の利用に関係するインスリンやグルカゴンなどのホルモンを血液中に放出する内分泌機能です。これらの全く異なる機能をともに持っている臓器は膵臓しかありません。なぜ同じ臓器である必要があるのかについていろいろな意見がありますが、はっきりしません。膵臓はとても興味のある臓器です。ただ魚にはありませんし、哺乳類でも十分注意して探さないと周囲の脂肪組織と色も硬さもそれほど違わない、目立たない臓器です。しかも人間では胃の裏にこっそり背中に貼りついたように存在します。
度の過ぎた飲酒は膵臓を傷めますが、まず外分泌腺を壊してから内分泌線の異常、すなわち糖尿病の発病が起こります。また糖尿病の人の中には膵臓が極端に委縮したか脂肪組織に置き換わってしまった場合もあります。
大量の飲酒などで起こる急性膵炎では、強力な消化酵素である膵液が自分の膵臓を消化してしまう、いわゆる自己消化という現象が起こります。しかもその現象は一旦スイッチがはいると制御不能になる場合があり、たとえ膵臓を全部取ってしまっても救命できないほどです。
膵臓癌が現在も治りにくい癌であることはよく知られています。有効な抗がん剤の開発が進められていますが、まだ十分な成果が上がっていません。手術の成果が得られていないことばかりが強調され、代わりになる治療法が育っていないというのが現状です。膵臓癌の死亡者数は3年前の集計で、約2万5千人です。決して少ない数字ではありません。しかも他の多くのがんの死亡者数が減少しているのに反してその数は一向に減る気配がありません。
胃や肝臓の専門医に比較して膵臓の専門医はきわめて少なく、その傾向は北陸でも同様です。膵臓疾患の早期発見や治療にはいろいろ特殊な知識や技術が必要ですから、専門医が増えることが期待されます。